根を張れ

2/11

長らく不在届が入っていた荷物をやっと受け取った。巾着をほどくとスムージーミキサー。お礼の連絡をすると、明日に山焼きを見にいかないかと誘われた。ぼうっと燃え上がるさまが興奮するのだそう。放火魔の気持ちがわかるのよ、電話越しの祖母はそう言う。3月にまた会う約束をしたらさっと電話は切れて、わたしは部屋に取り残されたのだった。

 

2/4

はじめてのオールナイト。13時に集合の予定なのにお互い遅刻して顔を合わせたのは15時だった。もう君としか友だちでいられない気がする。

未成年のころに夢みたオールナイトはたのしくてたのしくて、ひさしぶりにどっぷりと余韻に浸かりたいライブだった。前転してるひと階段で寝てるひと、常識の範囲内での秩序の乱れが心地良い。

〜ライブレポ〜

ululuはまえ見たよりも音のはまり方がどんぴしゃで駆け上がってきた。駆け上がる音の真ん中にある重たい大滝カヨの声とかたしかな生活感のある歌詞。犀川のよくわからない石に座ってhappyendを聴いたわたし、ululuはライブでもとても最高だよ。

ぜったくんのライブ、一番後ろの階段で座りながらみる。さとうもか、来ないよな来たらどうする?って笑ってたところにスペシャルゲストさとうもかちゃーんって響いて、ふたりで階段を駆け降りた。もか〜Momともコラボしてんじゃんどうすんだよ〜もか〜元気出してよ〜。

水曜日のカンパネラは、令和のプリキュアだと思う。radio gigaで履修済みだったから振り付けなんてお手のものだ。バルーンの中に入った水曜日のカンパネラは、パフォーマーを体現していてきらきらしてた。

あのSUNNY CAR WASHを私たちは見たことがなかった、そう、あのアダムくん。2階席のガラスにもたれかかって、眠たそうな友達の声。アダムくん、もうアダムくんの曲しかやらないのかね〜(まあいいんだけどね)2階のたるんだ空気が一変したのは、カーステレオだったから。つづけてキルミー、それだけ、ムーンステップを歌い上げてアダムくんは颯爽と帰ってった。放心気味にその足でガストに向かう。歩くたびに浮ついた足が地面について、うれしさがこみ上げてきた。あの、(本当はちょっと違うかもしれないけれど)SUNNY CAR WASHをみたんだ。

腹ごしらえをして、コンビニでコーヒーを飲んで、ハイネケンを持ち歩いて、次はMONO NO AWARE。実はMONO NO AWAREを聴くようになったのは、その日横にいた友人とはじめてみた時からだった。そんな小話は置いて、とにかく気持ちよかった。この音楽性で、こんなに色気があっていいんだろうか...なんじゃこれゃ、度肝を抜かれた。幽霊船のイントロ、あんなにぞわっとしてのぼせてしまうような音の並べ方、他にあるんでしょうか。

ふらふらしたあと、the dadadadaysをみた。tetoでなくなった小池さんがうたうtetoの曲もdadadaの曲も良かった。メアリー無理しないで、奴隷の唄、tetoって痛いくらいだから良いよね。dadadaはちょっと愛がある気がした。人を引き寄せてしまう小池さんの類い稀ない引力は変わらないままで安心した。中毒になりそう、やっぱり聴く麻薬で、どっかにトリップする、teto(dadada)のライブでしかみれない感情があるからやめられない。

転換の時間、会場の3分の2は座りこみをしてて、スラムだスラムだーと友だちと喚いた。Cody Leeが出てくるとスラムはぞろぞろと解散をして立ち上がってく。Cody Leeっていつみても誰が女の人か男の人がぱっと判断できないし、えっこんな人たちがCody Leeだったんだ?って思う現象なんなんだろう。時刻は1時を回っていた。

Cody Leeにみとれている友だちを置いて、2階のステージにかけ走ったら、売れないユーチューバーみたいな人たちがでてきた。君らが極東飯店か。ステッカーをばら撒いてくれたけどわたしの足元には落ちなくて悔しかった。荒削りなんだけど、ちゃっちい感じはするんだけど、キャッチーすぎないし、ウケ狙いの曲でもないし、ちゃんと歌ってくれてて、よくわかんないけど面白くて良かった。

最後にドレスコーズをみた。明け方のドレスコーズ、ぼんやりとした頭にドレスコーズが染みていってMPが回復していくのをたしかに感じた。

なんだか勿体無くて帰れないでいると、DJダイノジが踊りはじめて、いつのまにか私たちも踊っていた。意味わかんないので、冷静になって周りを見ると周りのみんなも真剣に踊ってて、おかしいのはわたしか、と思って最後まで踊ってしまった。正気の沙汰ではないが楽しかった。ツーステなんてしちゃったよ、23歳でよ。 

DJダイノジが帰ると、さっきまで陽気に踊っていたひとたちもふつうに歩きはじめて、そぞろに帰っていった。ホテルに着くと、一旦横になるね、と言って友人は眠りについた。

〜ライブレポおわり〜

2/10

免許の有効期限が切れていた。再発行するには普通の更新をする人たちと違う手順が必要らしい。4番の窓口に向かった。4番の窓口の人たちはいかにも免許の有効期限が切れていそうなメンバーでポッケに穴が空いていたりくちゃくちゃの紙を持っていたりした。わたしらは大きく出れないから、はいはいすんませんでした、はいと頷きながらようやく免許証を再発行してもらった。

 

2/11

通勤で自転車を漕いでいて見上げたとき、わたしはふと、ここがわたしの現実なんだなとわかった。ピントがようやく合った気がした。会社の机に向かう椅子の高さを低くして、床に自分の足がつくようにした。野菜が安いスーパーを知って、かわいい本屋さんの店員さんと話をして、ちょっとずつ輪郭がぼやけてここに溶け込んでいっている。わたしはここでしばらく生きていくんだろう。

 

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