きねんび

私はもう大丈夫なんだ、とわかってしまった。ひとりでカレーを食べたとき。

 

22歳になった。きのう泊りがけであそんだから、起きたのは11時。きょうくらいインターネットからはなれようと決めていたのに、メルカリで送るものがあることに気づいて、しかたなく充電をさす。「おめでとう」の連絡のあいだに大学から留守電があり、寝ぼけた頭で折り返す、12時。きょうは誰とも予定がない、わたしの記念日だから。

 

夏休みがはじまってから誰かしらとの予定があり、ずっとせわしなかった。きょうは本屋さんでたくさんの本をかいこんで、喫茶店でカレーを食べて、パン屋さんで紅茶のロールケーキを買ってかえる。淡いピンクのワンピース、透かし編みのカーディガン、花みたいなイヤリング、きらきらラメ入りアイシャドウ。

おめかししてバスに乗る。猫たちよ、きょうは私の記念日なのだ。

 

試し乗りみたいな恋愛しかしたことない、大学で入ったサークルは二つともやめた、今でもたまにバイト先で怒られる。

それでも私は、もう大丈夫なんだ。

少なくとも一昨年よりは、去年よりは。

 

紙袋を重ねて部屋にもどる。友人からの電話、今度金沢にきてくれるんだって。

きょうのアルコールはいつもよりおいしい。きっと来年はもっと。

 

22歳もすべてを投げ出したいくらい自分に嫌気がさす日も、誰かに愛されてたまらなくなる日も、軽んじられて苛立つ日もあると思う。

それでもこういう日のために、ほそぼそと生きていきたいよ。

 

あなたにもどうか幸がありますように。

 

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