静かに逞しく

乾いた午前の空気、東海道線の車窓とululuの音楽の相性は良かった。今日は孫デイ、改札には祖母と大叔母がこじんまりと待っている。いつからわたしは、二人のことを、みおろせるようになったんだろうか。

駅前のいつものレストランで食事をすませる。祖母はつらつらと食べれないものを説明した。食べれるものは、うどんと、おかゆと、白身のお魚、煮た野菜、それから缶詰、ビスケット。まるで病食ね、大叔母は言った。

会計の前に大叔母とお手洗いへむかう。混んでいて地下のお手洗いまで行った。一銭も持っていないのに地下の花屋さんもついでにのぞいて、不謹慎だけど、きれいな格好をしたホームレスみたいで可笑しかった。花、ゼリー、ネックレスと書いた紙切れを大叔母は見せてくれた。ネックレスの金具がとれてしまって修理に出したいのだそう。

みっしりとボタンとミシン糸が並ぶ。河口湖のちかくで買ったという、ビーズが何層にも重なったネックレスを、うまく直してもらうと、大叔母はその場でつけてみせた。空にはぽつぽつとカラフルな風船が浮かぶ。内陸の雪国で育ったわたしは、太平洋側のほがらかさ(能天気さ?)がかなり好きだ。

それから祖母が百均でコップを買い、大叔母のよく行く洋服屋さんに顔を出し孫に間違えられてそのままにしたりして、カフェにはいった。

祖母も大叔母もわたしも、そろってプリンを頼んだ。缶詰のさくらんぼとホイップクリームがのってるかためのプリンと対峙しながら、祖母はとうとうと年末のこと、これからの検査のことなどを話した。検査にはまた2週間かかって、今度は深さを調べること、年始に旅館に行くがまったく気乗りしないこと。ぱぱっと年内にすましちゃいたいわよね、大叔母は適当に、けどずっと相槌をうっていた。

それから年末にたべるお餅の予約をして、わたしがお餅をとりにいく約束をした。食べれない食材が並ぶデパートを歩かなくちゃならない祖母の背中はいっそう頼りなかった。

祖母が隣人に車で迎えにきてもらうため、電話をしてるあいだ、大叔母とわたしはソファで待つことにした。誰かに何から何までしてもらうようになっちゃだめよ、わたしならタクシーで帰るわ、大叔母はきっぱり言った。大叔母は強くてかっこいいから、とわたしが言うと、少し顔がほころんでた。琴一個いらない、と聞かれたけど、大きいならいらない、と答えた。ほんとうはいつかもらってもいい。

 

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